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VOICE OF TAKU山崎拓の主張
『北朝鮮問題』 米国ヘリテージ財団での講演録
北朝鮮外交は対話を継続してあらゆる外交政治努力を 2006年7月25日
米国独立記念日の7月4日、日本時間7月5日、早朝3時30分頃を皮切りに7回に亘り、北朝鮮から日本海に向かって、弾道ミサイル各1発が発射された。その内第3発目はテポドン—兇噺られ北朝鮮東部沿岸地域のテポドン地区より発射された。又、その他6発については、ノドン又は、スカッドと見られ、北朝鮮東部沿岸地域のキテリョンより発射された。落下推定地点はいずれもロシア沿岸州南方の日本海公海部分であり、日本の領土内への落下物は確認されていない。これらの情報は米軍からの早期警戒情報を含め、自衛隊の警戒監視システムにより把握されたものである。   
  
今回の北朝鮮によるミサイル発射について、7月6日北朝鮮外務省のスポークスマンは、「我が軍隊が行った通常の軍事訓練の一環である。今後も自衛的抑止力の強化の一環として、ミサイル発射訓練を継続するであろう。」と発表した。   
  
これに対し7月7日、ブッシュ大統領は「国際合意に違反することで、見返りを与えてはならない。北朝鮮が米国に対しミサイルを発射した場合、ミサイル防衛システムによりミサイルを迎撃する合理的可能性がある。」と発言された。   
  
今次ミサイル発射事案が、仮に北朝鮮の言う通り、通常の軍事訓練の一環だとしても、次のような警戒すべき重大な問題点を提起している。   
  
第一に、7発のうち6発はスカッドかノドンだとされており、ノドンは射程1300kmもあって、沖縄を除く日本列島全域をカバーしている。又、3発目のテポドンは2段型発射の場合、射程約6000kmあるとされており、アンカレッジやハワイ沖迄届くとされている。3段型発射の場合は、北米全土を射程に収める可能性がある。   
  
第二に、去る7月20日、ヒル国務次官補が上院外交委員会の公聴会で証言した通り、ミサイル発射にはイラン当局者が立ち会っていたとの情報がある。つまりイランへの売り込みの一環ではないかということである。   
  
第三に、過去北朝鮮はミサイル・モラトリアムについて累次の発言で国際約束を行ってきた。その1つに2002年9月17日小泉首相の訪朝に際して発表された「日朝平壌宣言」には、「北朝鮮がミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した」と明記されている。すなわち今回の北朝鮮によるミサイル発射は、重大な国際公約違反事件であることは間違いない。又、米国も「北東アジア地域の永続的な平和と安全のための共同の努力」を約束した第4回6者会合(2005年9月19日)で採択された共同声明に反すると警告している。   
  
さて、本事件に対する国際社会の対応は迅速に行われた。日本政府は直ちに国連安保理議長国のフランスに対し、制裁決議の為の協議開催の要請を行い、7日午後には日米等7カ国は制裁決議案を提出した。その後、紆余曲折を経て、7月15日午後安保理は公式会合を開催、中国・ロシア両国の拒否権発動を回避すべく国連憲章第七章への言及を外した非難決議案を全会一致で採択した。   
  
ボルトン米国連大使は、『明白で、不明瞭なところのない、そして全会一致のメッセージを平壌に送った』と発言したが、粘り強く推進した日米外交の勝利と評価されて良いと考えている。しかしながら、問題はこの決議にある北朝鮮をして、『無条件に直ちに六者会合に復帰させ2005年9月19日の共同声明の迅速な実施に向けた作業、特にすべての核兵器及び既存の核計画の放棄並びにNPT及びIAEA保障措置への早期復帰』させることを如何に早期に実現するかである。   
  
わが国の政治家の中には、この非難決議にある『国際の平和及び安全の維持のための特別な責任の下に行動する。』の文言に基づいて実質的に第七章第41条(非軍事的措置)の経済制裁や第42条(軍事的措置)の軍事制裁を断行すべきだという意見がある。軍事制裁を行う場合、国連多国籍軍としてではなく有志連合軍の形になると思われるが、当然その中心国は米国に引き受けてもらわなければならない。北朝鮮が韓国を攻撃すれば在韓米軍が対処することになろうが、そのようなケ―スは考えにくい。又、日本に対して直接攻撃を仕掛けてきた場合には日米安保体制下の共同対処になるが、ミサイル発射実験だけで直ちに軍事制裁に踏み切ることについては、国際社会全体の同調は得られないと思われる。   
  
この議論に関連して、北朝鮮のミサイル発射基地を叩くべしとの勇ましい議論が日本国内で噴出し、政府要人がこの議論に参加することによって国民世論の喝采を博している。北朝鮮の軍事力は、総兵力約110万人とされているが、その内陸軍が27個師団約100万人と大半を占めており、かつその三分の二がDMZ(38度線の非武装地帯)に張りついている。その他海軍約590隻約10.3万トン、空軍作戦機約580機となっているが何れも装備が旧式であり対日侵攻能力としては極めて脆弱である。従って北朝鮮の軍事力の実質的脅威は、弾道ミサイル攻撃と特殊部隊潜入以外は考えにくい。   
  
弾道ミサイルについては、既に射程1300KMのノドンを約200基有していると言われており、弾頭に核兵器か生物兵器が装着された場合にはわが国は重大な被害を受けることになる。核兵器について北朝鮮は既に5〜6個保有しているという見方があり、2005年5月エルバラダイIAEA事務局長も報道関係者にこれを認めている。このような背景の下にミサイル攻撃に対し座して自滅を待つのではなく自らミサイル発信基地を叩くべしとする議論は一定の説得力を有しているが、わが国が現時点でそのような能力を持つことは憲法解釈上困難である。   
  
1998年4月の国会で当時の瓦防衛庁長官は、この問題についての質問に対し、『ミサイル発信基地を攻撃できるような攻撃的兵器を保有することは、自衛のための必要最小限度の範囲を超えることになり、いかなる場合にも許されない。例えばICBM、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母を自衛隊が保有することは許されない。』と答弁している。   
  
そこで私は、わが国が北朝鮮のミサイル攻撃に対し座して自滅を待つことを避けるために、正しく日米安保体制が存在していると考える。1997年9月に改訂された『日本有事の際の日米防衛協力のガイドライン』には、日本に対する武力攻撃がなされた場合として次のように書かれている。   
  
『自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。   
米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。』即ち発信基地打撃力は米軍に依存することになっている。故に有事の際の迅速かつ有効な防衛協力を行うための恒常的な情報交換と日米共同訓練が必要なのである。   
  
一方当面まずはミサイル迎撃体制の整備が急務であり、去る7月20日日米両政府は、米軍の地対空ミサイル、パトリオット(PAC-3)を沖縄県の米軍嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区に配備し、年内に一部の運用を始めると発表した。   
  
米軍のPAC-3の国内配備は初めてであり、北朝鮮の弾道ミサイル発射の動きに敏速に対処したものと日本国内世論は歓迎するむきが多い。日本側も同様にミサイル防衛(MD)整備を急いでおり、日本国内の首都圏と近畿・中京圏の高射群に2006年度中にPAC-3の配備を開始し、2011年度には国内6高射群のうち4高射群に全てPAC-3の配備が完了する予定である。これについての経費は1兆円程度を要するものと見積っている。   
  
さてプロイセンの軍人、クラウゼビッツはその著書『戦争論』の中で次の有名な言葉を残している。それは『戦争は他の手段をもってする政治の継続である。』という言葉である。   
  
つまり武力行使は最後の手段であり、まず外交の力によって国際紛争の芽をつんでいかなければならない。国連安保理決議もその一環であろうが、いわゆる北朝鮮問題を取り扱う国際的な枠組みとして『六者会合』がある。制裁重視の日米と対話重視の中韓露に分かれていると言われるが、私はまず対話による解決の努力が先行すべきであり、『六者会合』に一日も早く北朝鮮を復帰させることが当面の課題であろう。北朝鮮が強く望んでいる米国との対話も六者会合の場に於て、別テーブルで米朝2国間対話を実現すれば良い。小泉総理もサンクトペテルブルクに於けるG8サミットの際にこの案を提唱しているが、米国も是非許容してほしい。   
  
当面来る7月28日にマレーシアで開かれるASEAN地域フォーラム(ARF)を活用し、6カ国外相会談を開催の上、北朝鮮の六者会合復帰への道筋をつけるべきだと思う。   
  
『六者会合』は、2005年11月の第5回会合で、米国がマカオのバンコデルタアジア銀行の北朝鮮口座を、偽札製造等の違法行為に関係したとして凍結したことを強く非難し、米国の金融制裁の解除を求めたが、米国は当然これを拒否した。以降『六者会合』は開かれていない。こうした中で北朝鮮はミサイル連射という瀬戸際外交の奇策で局面の打開を狙ったものと考えられる。   
  
道は2つしかない。   
1つはあく迄も北朝鮮の求める米国との直接対話を拒否し、経済制裁から軍事制裁へと進んでいくのか、   
もしくは中国の対朝影響力を過大評価せずに、ミサイル発射は北朝鮮の向米ラブコールだと寛大に受け止め、この際硬軟両用の弾力的な対朝姿勢に転換するのか、二者択一である。   
  
私は当面、辛抱強く後者でいくべきことを提案してスピーチの結びとしたい。   
  
以上   
  
ヘリテージ財団での講演風景
  
北朝鮮問題で硬軟両様の弾力的対応を主張する山崎拓
  
  
  
 
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