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台湾特別講演
11月21日(木)、台湾の亜州自由民主聯盟台湾委員會のご招待により、台大醫院會議中心にて特別講演を致しました。  
講演内容は以下の通りです。  
  
演題  
「アジア・太平洋地域の平和と安全」  
   
 アジア・太平洋地域の平和と安全の鍵を握るのは、米国と中国という二つの軍事大国、いわゆる二十一世紀のG2である。この二つの軍事大国の軍事力(二〇一一年度)を比較してみると、米中の差は相当な勢いで接近しつつある。  
 「陸上兵力」では、中国が世界一位の一六〇万人、米国は世界四位の六四万人である。  
 「海上兵力」では、米国が世界一位の六一四万トン一〇六九隻。中国は、世界三位の二一一万トン九四六隻。この差は、米国が空母を十一隻有し、中国はこの時点では一隻も就航していなかったことが大きい。  
 「航空兵力(作戦機数)」では、米国が世界一位の三七九〇機、中国が第二位の二〇四〇機である。  
 因みに日本と台湾について言えば、陸上兵力は共に二十万人を切っており、二十位前後である。海上兵力は日本が世界五位の四十五万トン、台湾が世界十一位の二十一万トン。航空兵力(作戦機数)は台湾が世界十位の五三〇機、日本は十四位の四三〇機である。  
 中国は、今や東シナ海や南シナ海において、二十一世紀の世界秩序である航行自由の原則や国際法や国際法規を無視して、フィリピン・ベトナム等(アセアン諸国の他国を含む)他国の領域を容赦なく侵す行動に出ている。習近平新主席も就任演説の中で「海洋強国」を目指す事を明確に打ち出している。  
  
 私は今年五月初旬、フィリピンを訪問したが、スカボロー礁の領有権をめぐり、中国海軍とフィリピン海軍の厳しい対立の中でフィリピンがいかに中国の軍事力を背景とした覇権主義に悩まされているかをアルメンドラス・エネルギー大臣ほかのフィリピン政府要人から訴えられた。  
 中国はベトナムにも有無を言わせぬ領土・領海の侵略を進めている。ベトナムは南沙・西沙両諸島の主権や排他的経済水域(EEZ)などを明確に定めた領海法を六月三十一日に公布したが、同じ日に中国は西沙・南沙・中沙の三諸島を弁事処(事務所)から「三沙市」に格上げすると発表した。発表によると三沙市の面積は、何と台湾の七十倍にあたる二百万平方キロ(海域を含む)、人口は台湾の二万三千百六十分の一の一千人である。同時に三諸島を統治するための軍事区を認定し、本格的な部隊展開を可能にした。  
 日本との間では尖閣諸島をめぐる海上での衝突が外交上の深刻な問題となっている。又台湾も中国より先に尖閣諸島の領有権を主張した経緯があり、とりわけ漁業権の問題が日台間の厳しい係争事項となっている。  
 このように東シナ海に中国が勢力を拡張している現状は、そのど真ん中に位置する台湾の安全保障がいかに不安定なものであるかを物語っている。  
台湾の安全保障にとって米国との関係は重要である。米国の東アジア・太平洋担当のキャンベル国務次官補は、九月二十日の上院外交委員会で、台湾との非公式関係強化を進めているところだと述べた。この後、十一月米国大統領選挙でオバマ大統領が再選され米台関係は強化されていくものと思われる。  
 これに先立ち昨年十一月オバマ大統領は、ハワイ、豪州のキャンベラ及びダーウィン、インドネシアのバリ島に飛び、キャンベラでは豪州議会において「新オバマ・ドクトリン」を表明した。  
 それによると、米国は二〇一一年中にイラクから、二〇一四年迄にアフガニスタンから撤退すること、同時にアジア太平洋地域における日本・韓国・豪州・フィリピン・タイ等の友好国と密接に協力してこの地域の秩序形成に、より大きな、より長期にわたる役割を演じるつもりだと明言した。又、国際法・国際法規・航行の自由という「核心的原則」の下に、中国はこの地域の安全保障に貢献すべきであり、領有権に関する意見の相違は平和的に解決すべきであると訴えた。  
 つまり米国の安全保障政策として、アジア・太平洋地域におけるプレゼンスを維持し、強化するためのヘッジング政策をとることを明言し、豪州のダーウィンに米海兵隊を二千百五百人駐留させることなど、従来の中東重視からアジア回帰への転換が本格的に進められることになった。  
 このような米国の取り組みをバックとして、アセアン諸国は、中国との海洋紛争 解決に向け、国際法の枠組みの下、国連海洋法条約に基づいた国際紛争解決メカニズムを軸とした南シナ海行動規範を中国との間に策定する方向を打ち出している。  
   
 ここで日中関係の大きな衝突である尖閣諸島の問題について触れておかざるを えないので、中国同様、領有権を主張しておられる台湾の皆様にも我慢して聞いていただきたい。  
 中国側は近年になって尖閣諸島の領有権を「核心的利益」の問題であると主張し、海監(国家海洋局所属 海洋監視船)、漁政(国家漁業局所属 漁業監視船)の監視船等が尖閣諸島の接続水域や領海に侵入し、日本の海保(海上保安庁)の監視船と衝突を繰り返している。そして去る九月十一日、野田総理が尖閣諸島の国有化を発表した。これに対し、中国は過剰反応し、デモ隊が在中国の日本企業の社屋や店舗・日本車を襲撃する事件が相次ぎ、日中貿易を中心に日中経済関係が一挙に冷えこんでしまった。  
 尖閣諸島が国内法上も国際法上も日本の領土の一部であることは、次の年表の通りであり、他国と係争となる領土問題は存在しないというのが日本の立場である。  
  
(年 表)  
【一八八五年以降】沖縄県を通じるなどして、尖閣諸島の現地調査開始   
  
【一八九五年一月十四日】現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行なって、正式にわが国の領土に編入   
  
【一九四〇年】無人島になる(それまで、最盛期には九十九戸二百四十八名が在住)   
  
【一九五一年】サンフランシスコ講和条約で、沖縄の一部としてアメリカの施政下に   
  
【一九六八年秋】日本,台湾,韓国の専門家が中心となって、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の協力を得て行った学術調査の結果,東シナ海に石油埋蔵の可能性ありとの指摘がなされる   
  
【一九七一年四月】台湾が公式に領有権を主張   
  
【一九七一年六月】沖縄返還協定により、尖閣諸島も米国より返還   
  
【一九七一年十二月】中国外交部が声明で領有権を主張  
  
 以上の経緯を踏まえて我が国は、尖閣諸島の領有権については一歩も譲れない立場である。そのため、領土保全の万全を期すため、海上保安庁の巡視船により領海侵犯排除に万全を期している。これはあく迄も警察活動である。  
 しかしながら、中国海軍の示威行為と領海侵犯がある場合、自衛隊による海上警備行動が発令されることになるだろう。これが万一武力衝突に発展した場合には、尖閣諸島が日本の政権下にあり主権が存在する以上、まず防衛出動待機命令が発せられることになろう。その後の事態によっては、つまり侵略が発生したと認定されれば、防衛出動命令が発せられる。同時に日米安保条約第五条が適用され、米軍の出動を要請することになりかねない。  
  
 以上のような展開は、可能性として日中戦争が発生し、米国が参戦するという悪夢のようなケースであり、絶対に避けなければならない。新年は日中新政権間で冷静な話し合いが行われ、日台間も水面下で、双方の真摯な外交努力による解決を期待したい。  
 近年、中国艦船はしばしば第一列島線(日本から台湾、インドネシアを結ぶ線)を突破する形で沖縄本島と宮古島の間を抜け、西太平洋上で軍事演習を繰り返している。これは伊豆諸島からグアム、パプアニューギニアを結ぶ線を「第二列島線」と位置づけ、二〇二四年迄に第二列島線までの西太平洋における優位な海軍力の展開を目指していると思われる。  
 一方これに対抗するため米国は、在沖縄の海兵隊の一部をグアムへ移転させ、フィリピンにも一部を常駐させる計画で、グアムを扇の要として、沖縄・フィリピン・オーストラリアに兵力を展開させ、同時に米軍を中国のミサイル射程距離外に分散して配置し、有事の際の抗堪力を高める再編を二〇二〇年迄に整える方針である。  
 一方中国政府(国務院)は、二〇一二年三月五日開幕の全人代(全国人民代表大会)に於いて、二〇一二年度(一月〜一二月)国防費を前年度実績十一‘二%増の六千七〇二億元(約八兆七千億円)とする予算案を提案した。これは二十四年連続二桁増となり、又各国軍事費比較では三年連続米国に次いで二位となる。(三位英国、四位フランス、五位ロシア、六位日本)  
  
 しかしこれには次世代ステルス戦闘機「殲二〇」等の兵器の研究開発費や外国からの装備調達費が含まれておらず、実際には公表額の一・七倍にのぼるとされている。  
 とりわけ中国海軍の充実ぶりはめざましく海南島亜竜湾に戦略ミサイル原潜を配備し、遼寧省大連で旧ソ連から購入した空母ワリヤーグの改修を進め、このたび就航したが、さらに一隻当り二〇〇億ドル(約一兆六千億円)の国産空母を建造中である。  
 さらに、米国の戦力投射能力に対抗する手段として、アクセス拒否、領域拒否(A2/AD)の能力を高めつつある。これに対抗して米国はエアシーバトル(海空戦闘)構想を打ち出した。これは海洋活動を益々活発させる中国海軍を封じ込めるため、海兵隊を中心とする軍事力の展開を企図している。  
 このように軍事面では、米中の熾烈な「グレート・ゲーム」が西太平洋で始まり、米国とその同盟国の連携にベトナムなども加わる形で、緩やかな対中包囲網が生まれつつある。  
 一方、北からはロシア太平洋艦隊の原潜が、米中双方をうかがう情勢である。又、故金正日国防委員長の急逝により若い金正恩新指導者に交代した北朝鮮は、引き続き核兵器の存廃を米国の経済支援の見返りとする瀬戸際政策をとっている。中国の台頭、西欧の後退という潮流によって、米・中・露・日本の指導者交代期を迎えた今年は、世界は新秩序形成に向かっているといえる。  
  
 しかしながら、米中の戦略的互恵関係は、米中が経済的な相互依存関係を深めているなか不変のものとも言える。  
 例えば、中国の米国国債保有額は、昨年十月末時点で一兆一千三四一億ドル(約八一七兆三千億円)にのぼり、全海外保有分の約四分の一(二七%)をはるかに超えている。  
 因みに二〇一一年には中国は米国にとって輸出相手先で首位(約四千億ドル)。輸入相手先で三位(約一千億ドル)に浮上している。輸出拡大で雇用増を目指すオバマ政権の 経済戦略は今や中国抜きには描くことが出来ない。  
 正に相互利益と相互尊重を旨とすべき米中経済関係である。従って米国は中国の平和的台頭を歓迎し、人民元の過小評価を改善させること等により均衡のとれた貿易関係を維持したいと考えている。中国もまた二月の習近平新主席(当時は副主席)訪米時に米国との貿易や投資の均衡が相互利益であると認めその実現に向けて努力することを表明していた。  
  
 このような現実を踏まえ二十一世紀のアジア・太平洋地域の安全保障問題は、米中軍事対決と米中経済協商の矛盾をどう克服していくかにかかっているが、中国の軍事拡張路線が続く限り、何れ第二の冷戦構造ができかねないとの国際社会の懸念と不安は解消されてない。それどころか日々大きくなりつつあるさえと言える。地勢的に両国の間に存在する日・韓両国と台湾がアジア太平洋地域の平和共存と米中衝突回避のスタビライザーたりうるか、これらの国の政治指導者に課せられた重い課題である。  
  
 
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