「信頼できる」というのは最大の評価

山口信夫:  わが社の先代の会長の宮崎輝が、防衛協会連合会といういわば自衛隊の民間の応援団の会長をしていたのですが、私は副会長で手伝っていて、渡辺美智雄先生と懇意にしていただいていました。その頃、渡辺先生から「一番信頼できるから」ということでご紹介いただいたのが山崎拓さんでした。
 最初に会う前に写真を見た限りでは、ちょっとカタイ感じがしましたね。やはり柔道をやってたから、武道の精神、というものが精神的な支柱にあるからでしょう。だけど、人間的な愛嬌があるとか温かみというのは、直接会ってみないとわからないものですね。会うたびに、朴訥さ、政治家に一番大事な、正直さとか誠実さとかを感じますね。「信頼できる」というのは最大の評価、最後の武器です。人間としてね。それは銀座のバーなんかでも、ホステスから惚れてますとか好きですとか言われるより、信頼できると言われるのが最大のほめ言葉ですよ(笑)。実際いいことはないですけどね(大笑い)。どの世界でも共通です。
 村山内閣のころ中期防見直しがあって、社会党政権下で采配が非常に難しいと心配しましたけれども、責任もって対応していただきました。それから政調会長になって、政調会長というのは一つの問題の責任者ではなく、全体を見る立場ですね。そのときにいろんな側面でお話を聞く機会がありまして、立派な政治家だな、とくに応援させていただこうと思いましたね。
 憲法改正問題などを通じても、一貫して大変積極的に自分の意見を述べているし、軸がぶれないんですよね。政治家としての軸がぶれない、ということ、それは山崎拓の魅力ですね。政治家としての一番大事なものはやはりその「軸」だと思います。
 防衛庁長官経験者も皆さん「防衛は大事だ」と考えてるんだけれども、やはり表に立つと選挙にマイナスだということで手を引く人が多かったけれど、一人、山崎拓さんが「防衛問題は政治家として一番大事なことだから」と自分が責任をもってやりますと言って対応していた。言うのは簡単だが、なかなか難しいんですね。
 ですから日本の政治家の中で軸がぶれない、信頼できる存在だと思います。自分のやるべきことに対しては、政治家としてのマイナスとか選挙や他の政治家との関係で難しいところもあるんだけれど、損得勘定なしで敢然としてやりぬくところです。
 集団的自衛権の議論でも、憲法の解釈を変えれば(集団的自衛権を)認められますよ、という話がありましたが、山崎さんは一顧だにされなかった。「解釈を変えるのでなく、きちんと憲法を改正すべきだ」と、そういうやはり軸ですよね。信頼できると思います。  話してまして、はにかんで笑われるときに何ともえも言われぬ人間味がありますね。カタいイメージだったけれども、なんかこう表情に魅力を感じますよね。笑いながらしゃべっている口元なんか見てると、温かみを人に感じさせますね。


総理を誠心誠意支えて、そして微動だにしない幹事長

山口信夫:  商工会議所の役員としての立場から注文するとしたら、日本の企業のうちの99.3%が中小企業なのです。中小企業の置かれている環境がとくに厳しいわけですね。ですから小泉内閣の経済政策に対しては他の経済3団体は比較的言わないのですが、(日本&東京)商工会議所の中小企業の立場からすると、「構造改革」もさることながら「景気浮揚をしてください」ということです。全体の構造改革は時間がかかりますからね。それは急ぐところからやって「景気」というものにもっと注目して頂きたい。それから中小企業に対する金融制度も、とくに大企業と違って中小企業は金融の流れがとまるとパタッといきますからね。「構造改革」はしてもらわなくてはならないけれども、残ってがんばらなくてはならない中小企業が健全にやっているのにポンと連鎖倒産があると、それは損失ですから、ぜひぜひ中小企業に対する金融のセーフティ・ネットは確保して頂きたい。
 小泉さんにも「私は商工会議所の立場ですからお願いしますよ」と言ったら、ニッコリ笑って握手しましたけど。山崎さんは、だいぶ前ですが、「山口さん、商工中金とか中小企業金融公庫など中小企業の政府系の金融機関については、これは今の時点では大事な役割を果たしているから、残すべきだと、総理の前で言ったら、総理はキョトンとしてたよ」と言ってましたね。そこは私どもの立場としては「ここは言わなきゃだめだ」というところがありますから言っておりますが、幹事長としてのめないところもあると思います。これはしかし立場の問題で、基本的な関係がありますから、よく分かっていただいてますね。「わかってるけどできることとできないことがある。いいことはいい。悪いことは悪い」ということですよね。
 今は見てると、小泉さんの高支持率の中で、小泉さんに言えないことはぜんぶ幹事長にバッシングが集まってますね。ほんとにつらい日々でもそれに耐えながら、総理を誠心誠意支えて、そして微動だにしない幹事長に対しては、色々な先生方もなかなか大したものだと思っておられるのではないでしょうか。
 小泉さんも全幅の信頼を置いておられるようだし、最後の最後になって一番信頼できる人は山崎さんだと思ってるんじゃないでしょうか。なかなか国民にはそれを理解してもらえずに苦しんでいると思うのですが、しかしそれは立場ですからね。今は小泉さんを表舞台に出して、そして、いろんな問題は全部自分のところで責任をかぶっていくんだということでしょう。今は損な役まわりと思いますけど、必ずいつか光り輝くもとになる、必ずそれが理解される。人間にはそれぞれ、そういう時期というものがあるので、そういう立場に立った時の方が政治家としては成長するのではないかと思います。現実は、なかなか立場に徹してできないもんなんですよね。幹事長というのは大変な権限があるんですがね、そういう権限を抑えてじっと我慢してやっていく、それはなかなかできないものですよね。


むしろ自分が「ボケ役」という形でカバーして

山口信夫:  私は今の小泉さんと山崎幹事長の立場は今のよう形でないといけないと思っているものですから。従来は、人事にしても政策にしても、幹事長に権限があるのですからやりすぎるくらいやって、そして総理には言わせないというのがホントはパターンですね。
 ところが小泉さんは自分でやらなきゃ気が済まない人ですから、やっぱり小泉総理の場合は今の山崎幹事長のやりかたで、やや目立たないけれど、縁の下の力持ち的な存在として上手にコンビを組んでいくのが良いように思います。ちょっと森さん(時代の幹事長)のようにはハッパをかけてもいけないのではないかという感じがするのですが。やっぱり山崎さんはそれをよくわきまえて、もし、これから小泉総理が難しい局面になった場合には、むしろ幹事長が自ら、総理に言わせないで、総理を後ろにおいて、自分で言ってまとめるという形をとって、敢然として泥をかぶらなきゃならん時期が来た時に、ちゃんとおやりになるのではないでしょうか。
 そういうことは政治家として決断ができると思いますよ。派閥を割ったときもそうでしたね、決断すべきところは決断してちゃんと実行していく意志の強さ、ですね。今、小泉さんとの関係では今のやり方がいいのではないでしょうか、おそらくね。会社の経営なんかでもそうなんですが、これが私の考え方です。
 テレビなんかでもっとテキパキとおっしゃられればいいと思いますけど、今の小泉総理はそれを全部自分でやっておられるから、やっぱり幹事長としてむしろ自分が「ボケ役」という形でカバーしていかれる、ということでそれがやっぱり党内ではうまく回転してきたのじゃないかと思いますね。
 田中(真紀子)さんが辞めたら内閣の評価が良くなるかと思いましたら、支持率が落ち過ぎましたね。私なんか組織の中の常識で考えて、組織でリーダーシップがない、組織を使える人ではないとだめだ、と。TVの視聴者とわれわれの見方が違うのでしょうね。もっと前に、他のことで更迭しとけばよかったのでしょうね。今度のNGOの関係では確かに田中さんに分がありましたからね。今までの全部を含めて辞めさせた、ということではないですか?今回のNGOの問題だけで辞めさせたのではないと思います。
 これから支持率が仮に下がったままで小泉さんがやることになったら、むしろ幹事長として、小泉さんが言うべきことを代わりに言って、自分がそれを受け止めて、小泉さんは後ろから総論的なことを言う、という形になった方がいい局面になるかもしれません。その場合はちゃんとおやりになるでしょう。  小泉さんはちょっと変わっていて、一度言い出したら聞かないのだ、ということを山崎さんはよくご存知だと思うんですよ。これだけ総理大臣の権限を強く発揮して、橋本さんが総理の時以上ですから、そして自分で全部頑固にやって、これだけ長く付き合っておられる山崎さんも予想外の小泉さんの強さだと思います。だから、(小泉さんに合わせて)自分の今のスタイルで行くと。もし風が吹いてきた時に、やっぱりテキパキとして処理されることをやるとなると、皆の評価がもっと高くなりますから。やっぱりそういうことをそういう時期になったらやれるという期待をしてますし、また、ぜひやってほしいと。その時期が来たら。


素朴さ、あたたかさ、が なぜTVで出ないんだろう

山口信夫:  今たとえば与党の間でもいろいろ対立もあるでしょう。でも口では賛成して腹では反対というのがないから、信頼されてるんじゃないですか。最初からだめなものはだめで、山崎さんがだめというならほんとにだめなんだろう、と相手も思うでしょうね。
 政治の世界では本音を言ったら終わり、本音を言ったほうが負けの政界で、本音で通しているのはたいしたもんですよ。つきあうとすぐわかるんだけど、最初から本音を言うスタイルだから信頼できる。
 もし風が吹いたときに、彼がちょっと変わることができれば。自分が全面に出なきゃならんときに、やることはピシっとやって、そしてにこっと笑えば。素顔で話した時に、ちょっと恥ずかしそうに「ふふふっ」と笑うでしょ。あの表情が非常にいいわけですよ。
 小泉さんはパンパンと言ったあとでちょっと言い過ぎたって顔でにこっと笑うでしょ。あの顔がいいんですよ。山崎さんも大胆なことを言ったあとで「ふふふっ」と恥ずかしそうに笑うんですが、それはいい顔ですよ。
 実際にお会いした時にわれわれが感じる素朴さ、あたたかさ、がなぜTVで出ないんだろうと思うんです。菅さんとか共産党の人相手にしゃべるのではなくて、画面の向こうにいる国民を相手にしゃべる気持ちで、自分を表して欲しい。国民に語り掛ける、国民に笑顔を見せる、ということでやればいいんです。普段話している、座談のときに出てる表情がTV画面でも出せるようにならなければいけない、注文を付けるとしたらそういうことですね。