(2002年2月9日 高知・新阪急ホテルにて)


スポーツは「ルールを守る」ということが身につく

山崎拓: ちょうど県連大会でこちら(高知)に参りましたもので、お会いできて嬉しい限りです。
王貞治: こちらこそ、もう7年も福岡にいるんですが、ご挨拶が遅れまして……。山崎さんは若いころスポーツをなさっていたんですか?
山崎拓: ええ、僕は柔道でして、中学から大学出るまで毎日。
王貞治: そうですか、じゃあ身体は鍛えられてますね。
山崎拓: 選手としては三流でしたが、今、6段です。
王貞治: 6段とはすごいですね。ひとつのことをある程度それだけ専門的にやってると、身体も、精神的にも鍛えられますしね。
山崎拓: ええ、それでもっているようなところはあります。
王貞治: 政治家のお仕事は、健康第一ですしね。お忙しいから大変ですね。
山崎拓: ええ、気力が要りますんで。八方、政敵ばかりですから、気力がないと……(笑)。
王貞治: われわれのほうも相手は敵なんですけど、潔いよいところは潔いんですよ、われわれは。勝ったとか負けたとか。
山崎拓: はっきりしてますからね。
王貞治: アウト、セーフとか、ファウル、フェアとか。はっきりしてるので相手も認めるわけです。山崎さんのお仕事はなかなかそういうわけにもいかないようで(笑)。
山崎拓: 僕はソフトボール協会の会長をしていて、ソフトボールを実践しているんです。もちろん超ヘタですが。試合前に挨拶するときに「ソフトボールっていうのは野球と同じで、”ルールを守る“精神を身につけるということが、社会人としてとてもためになる。ですから審判の判定に不服を言わずにいい試合をやりましょう」と話すんです。
王貞治: 今は「ルールを守る」ということをなかなか教えませんし、覚えるのも難しいですね。口でうまくごまかしちゃうという部分が普通の世の中でも多くなってますけど、スポーツは「ルールを守る」ということが身につく、そうでないとスポーツの世界では生きていけませんからね。私も少年野球のお世話をしたりしてますが、友達をつくる、身体をしっかりつくる、自然にルールを守ることが身につく、その3つがスポーツをやる一番の良さじゃないかと思います。ほんとに上手になる人は少ない、ごく一部です。でもスポーツを通して3つの良いことが身につく、これはすごくいいことじゃないかと思うんですけどね。
山崎拓: そりゃみんなが王選手にはなれませんからね(笑)。
王貞治: 子どもたちの変化っていいますか、成長が早いですから、ちょっと前までできなかったことができるようになったとか、そういうのを見ると大変楽しくて。プロ野球の世界でも18歳で高校生から入ってきて、これが4〜5年すると大変立派な身体にもなりますし、選手としても素晴らしくなる、そういう成長過程を見る。前は自分でやってましたけど、今はそういう若い人たちの変化を見るのがすごく楽しいですね。
山崎拓: 自信がつきますからね、自分が上手になれば。練習すれば上手になるということが身をもってわかる。
王貞治: そのチームそれぞれのお手本がいるんですね。優秀な成績を出す選手がいますから、その選手の練習風景、生きざまみたいなものまで、若い人たちは見てます。ああいうふうにしたらうまくなれるんだとかねこれはもう口でいくらいってもなかなか伝わらないんですけど、いい手本が目の前にいると伸びるのが早いですね。



技術の世界なのに 精神的なものが大きい

山崎拓: すごくスマートにしておられますが、健康管理は?選手と一緒に練習されるからでしょうか?
王貞治: いえ、そういうふうな動きはしてないんです。体質もあると思いますがやっぱり人に見られますので、しゃんとしていようという意識は同じ年代の人よりあるんじゃないかと思います。生活もおのずからそれなりの制約をしますし、あんまり太らないようにしようとか、出るときは顔たたいて出て行くとか、そういうのはありますね。
山崎拓: 僕もよくやります。演説会の前とか、パンパンッとこう、顔たたいてから出て行きます。
王貞治: 山崎さんが一番最初にいわれた「気力」というのは、コンディションがよくないと持続できないですね。その気になってもすぐ途切れてしまいます。1年間長い戦いですので、選手たちも調子の波というものはあるんですが、その中でもやる気というか闘争心を燃やすためには「気力」を持続させることが大事ですね。
山崎拓: 相手にのまれるとよくないんじゃないですか?
王貞治: はい、もう今このチームは調子悪い、元気がないなんて相手に思われたらダメですね。むこうの力がどんどん出てきて、こちらの力が出なくなります。だから4〜5年前までだと、ダイエーホークスとやるというと、ヘンな話、相手が「きょうは勝てる」という気持ちでやりますから、本来もってる力以上のものが出ちゃう。
山崎拓: なるほど…むこうがね……。
王貞治: こっちはこっちで萎縮しちゃうというようなところがありました。でも今はダイエー強くなったからな、すごいバッターが多くてホームランもたくさん打つからなと、相手がダイエーとやりたくない、そういうムードがでてきてますから、そういう点ではチームがガラッと変わった気がします。
山崎拓: ピッチャーもそうでしょうね。打たれそうな気がするとスピードが出なかったりするんじゃないですか?
王貞治: 真ん中、打ちやすいとこ、打ちやすいとこにいってしまうんですね。
山崎拓: 逆に。ほう……。
王貞治: そうなんです、胸元に投げようとか、アウトコース一番低めの遠いとこに投げようとか思うんですが、名前も知らない無名の新しく出てきた1年生なんてのが相手のバッターだと、案外狙ったところに行くんですね。ところがいつもホームラン打ってる、この前ホームラン打たれた、いやだなと思うような相手だと、不思議と真ん中に入ってしまうんですね。
山崎拓: 小久保とか松中とか……。
王貞治: だから、いいバッターほど打ちやすいところに球がきちゃうんですね。そこに投げようと思ってんじゃないのに、そこに魅入られたように入っていってしまうということがありますね。
山崎拓: ほう…魅入られたように投げちゃう……。
王貞治: なぜだ、とベンチに帰ってきて監督やコーチから怒られるんですが、そんなところに投げるつもりはサラサラない、それなのにいってしまうんです、と選手たちはよく言いますね。技術の世界なのに精神的なものが大きいんです。
山崎拓: 僕らも柔道の試合のとき、相手が強いと思ったら負けてますね。組む前から、あるいは組んだ瞬間に、強さはだいたいわかる。ああこれはヤバイと思ったら負けるんですね。相手が弱いって感じがすると勝つんだけど。
王貞治: 野球はボールとかバッターとかって距離がありますから、まだそうでもないんですけど、柔道とか相撲とかみたいにじかに組むっていうと、直接伝わってくるでしょうね。


お客さんが最後まで 信じてくれてるんだから

山崎拓: ダイエーをこんなに強くしていただいて、ファンのひとりとして福岡市民のひとりとしていつも感謝してます。
王貞治: ありがとうございます。
山崎拓: やっぱり王監督の人気というものがもともとあって、それでみんな集まって。みんな集まると選手もやる気出すんじゃないでしょうかね。だいぶ観客の数が違うでしょう?
王貞治: そうですね、お客さんの数、ほんとにこれは球団の企業努力もあったと思いますが、つねにほぼ満員のところでやれるということで、みんなに見られてるということは選手たちにとっては気合が入りますね。やはりファンの人って正直ですから、いいプレーをしたり勝ったたりしたときの反応がじかに伝わってくると、やっぱり選手たちも「頑張ってよかった、勝ってよかった」と直接感じて「あしたも頑張ろう」となります。そういう点ではお客さんがいるかいないかで大きく違います。お客さんの反応がストレートに伝わってくるということが、われわれの世界の一番いいところだと思んですね。
山崎拓: いい循環が生まれるでしょうね。
王貞治: ええ、やっぱり負けたり変なプレーしたりしたら、ヤジられるわけです。人間ですからミスもするんですけど、ヤジられたときは気分が悪いし、ナニクソという気持ちになりますしね。お客さんが入ってない野球場では盛り上がりに欠けますから、いいプレーが出にくいというところはありますね。福岡のファンの人と気持ちが通じてるという自負はあるんですけど。
山崎拓: これほど地元の人たちと一体になった球団というのもなかなかないですよね。
王貞治: ええないと思います。もちろん人気があるという意味では、観客数の面でもジャイアンツが一番ですけど、一体感、熱狂的なファンという意味では福岡です。
山崎拓: 優勝パレードの熱狂振りをみても、すごかったですね。
王貞治: 観客動員の中で、ひとりの人が何回行ったかというと、10回とか20回とか圧倒的に福岡が多いです。東京の人はいろんな人がせいぜい年1回行ったか2回行ったという人ばかりだと思うんですけど。とくに外野席 なんてそういう人が圧倒的に多いですから。
山崎拓: のぼせもん、と言うんです。のぼせもんが多いんです。山笠でもどんたくでもそうなんですけど……。
王貞治: だから申し訳ないときもあるんですね。変な試合でも負けてるときでも一生懸命応援してくれるんです。
山崎拓: 最後まで帰らない。でも逆転するから残るんです。
王貞治: 普通だとね、もう変な試合になってきたら東京な んかどんどん帰っちゃうんですね。東京ドームなんて 合がおもしろくないと帰っちゃう。福岡の人は途中で帰ることは少ないですね。野球そのものを好きなんだという感じで。
山崎拓: 大差で負けてても打ち返して逆転すること多いでしょ、あれでみんな帰らないんですよ。帰らないから逆転するのかもしれませんけどね(笑)。
王貞治: お客さんが最後まで信じてくれてるんだから、というのはありますね。打つほうも福岡ドームみたいなすごく大きな球場にもかかわらず、選手たちがここじゃ無理だよじゃなくて、大ききゃ大きいなりに打ちゃあいいじゃないか、というふうにチャレンジしてくれまして、どんどん良くなりました。今は12球団でも一、二の打線を誇れるんじゃないですかね。
山崎拓: 以前、あそこはホームランが出にくいといってたけど出るようになりましたからね。
王貞治: ほんとに見事なホームランが出るようになりました。味方ながら感心しちゃうことがありますね。センターバックスクリーンとか右のほうとか普通じゃ飛ばせないようなところに平気で飛ばしてきますから。やれば打てるようになる、距離もでるんだ、というお手本になれることは大きいと思いますね。子どもたちは身近に見れますから、夢を持つわけですね。それと、地元のファンの反応はすごいですね。街で会っても。東京なんかとちがって気楽に、どこへいっても声かけてくれる。そういうのが伝わってくるというのはうれしいですね。



「いい国をつくろう」と ひとつになればね、活力もでて

山崎拓: 最初はびっくりされませんでしたか?
王貞治: ええ、最初はびっくりしました。東京ではよっぽど熱心な野球ファン以外はそんなに……。福岡はマンションの同じ階の人、商店街の人、みんな気楽に声をかけてくれるんで、すごくうれしかった。東京の墨田区という下町で育ったものですから、どちらかというと福岡の今の生活が僕には合った環境なんです。居酒屋とかでそこに来てるお客さんたちと親しくなったりして、そういう人たちが野球場に応援に来てくれたりですね。単身赴任なんですが楽しくやってます。
山崎拓: 僕も野球を見るのが楽しみで、野球狂といわれるほどなんですが、実はダイエー狂なんです。
王貞治: こうなってきますと、お互いのためにがんばろうっていうようなところがありまして。そうなると選手たちも練習はきついんですけれど、そういう思いがあるから苦にならない。
山崎拓: やる気がわかないと、優秀な選手を集めてくるだけじゃ勝てないところがありますね。超一流の人を集めて作ったチームでも優勝できませんからね。
王貞治: ひとつの目標に向かってみんなの気持ちが結びつくと強くなりますね。日本一になったときには、リーグ優勝するとは思ってませんでしたし、日本一になるとも思ってないのが、あれよあれよという間にワーッといっちゃって、自分たちでもできるんだ、というのを選手たちが感じてくれたのが大きかったですね。あれから選手たちがガラッと変わりました。それまでは半信半疑のところもあったんですがね。(笑)。
山崎拓: 国としても同じで、国民が「いい国をつくろう」とひとつになればね、活力もでて発展するんですが……。
王貞治: 利害関係や生活環境というものがみな違うから、みんなにいい、ってことはありえないわけですから。ほんとうに山崎さんのお仕事は大変ですね。そういう中でどう折り合いつけて行くかというのは本当に大変なことだと思います。
山崎拓: 小泉総理の受けたところは、三方一両損といってみんなちょっとずつ損してくれ、互いに痛みを分かち合ってくれ、と率直に言った政治家は今まで少ないんです。みんないいことばっかり言って、三方一両「得」みたいな(笑)。だから、逆療法で受けてたようなところがあると思うんですけど。
王貞治: とくに経済不況が長いですから。ですからなんとか今度はよくなるだろうという期待はあると思いますね。
山崎拓: 経済が悪いと観客動員数って減りますか?
王貞治: おもしろいもんでしてね、どんどん海外行けるほど景気がよすぎちゃうと球場に来ないっていう話が昔からありましてね(笑)。だからちょっと、ちょっと悪いくらいがいいんじゃないかと……。
山崎拓: なるほど(笑)。
王貞治: 今くらい悪いと困るんですが……。
山崎拓: 今はちょっと悪すぎるでしょうか。
王貞治: はい、もうちょっとよくなってほしいですね(笑)。
山崎拓: すぐ小泉総理に伝えておきます(笑)。
王貞治: やっぱり気持ちの上での豊かさというか、余裕というか、そういうものを持てる時代をみんな求めてるんじゃないですかね。そういう意味でいま豊かさ、余裕がない気がしますね。



使っていただく方に根気 がないとここまでには なれなかった

王貞治: ソフトボール協会の会長をなさってるというお話でしたが、オリンピックで日本女子が活躍してソフトボールが認知されて、今までよりもずいぶん盛んになってますね。
山崎拓: 全国津々浦々どこでもしょっちゅうやってますね。ゴルフは遠くに行かなきゃいけないけどソフトボールは街中でできる。
王貞治: ゴルフは4人ですからね、その点ソフトボールはみんなでやって、勝っても負けても終わったあとビール1杯飲んだりして楽しいですからね。元気が一番ですから、多少投げたり走ったり、鍛えるつもりがなくても自然に鍛えてしまうというのがいいところじゃないですかね。
山崎拓: ソフトボールが盛んになるとプロ野球ファンもふえるんですよ。ルールがほとんど同じですから。球が大きいとか離塁したらいかんとか違うところもありますが。
王貞治: プロ野球みてすごいな、とか思うのはやっぱり自分でなかなか打てないとか体験してわかっていただくから。どんどん皆さんに体験していただいたらもっともっと野球に関心もっていただけるんじゃないかと思います。
山崎拓: 僕らの草野球とかソフトボールと比べますとね。プロの野球は信じられない神業ですよ。鍛えた人は違うなあ、とほんとに思います。その中で最高峰になられたんだから、王さんはほんとに神様ですね。
王貞治: 毎日毎日、反復練習やりまして。いいことができると人間、欲がでまして、もっとできるようになりたい、いい結果を出したい、と。そうなってくると、もともとうまい人たちばかりが集まっているわけですから、そういうふうに目覚めた人はどんどん成長しますね。若い選手の成長を見ると楽しくて。若いころはいろいろな方に教えていただきましたけど、その方々はわれわれの成長を見るのが楽しかったんじゃないですかね。残念ながらもう現役ではできなくなって、そういう楽しみ方しかできなくなりましたけど。
山崎拓: 一本足打法というのは、いつ身に着けられたんですか?
王貞治: 昭和37年、プロ野球で4年目だったんですが、それまであまりいい成績じゃなくてちょっと自信もなくしてたときもあったんです。荒川さんという当時のバッティングコーチに相談しまして、それだったらいっそのこと思いきって足をあげて打ったらどうかと勧められまして。急遽、そのシーズン途中、7月1日、今でも区切りがいいので覚えてますが、たまたま試合前にちょっと練習しただけで、すぐぶっつけ本番でした。そうしたら思いもよらずホームランが出てしまいまして、これはいいんじゃないかということでそれからずっと続けたんです。もともとホームランが打てるからやったというんじゃなくて、窮屈な打ち方ばかりしてたもんですから、窮屈じゃないように打つためにはどうしたらいいか、ということでやってみたら結果的にホームランがでちゃった。その後、川上さんにも普通の打ち方に戻したら、打率の面でもすべてよくなるからどうかと勧められたんですけど、自分としてはもうこの打ち方でないと打てそうな自信がないからということで通したんです。誰にでもあてはまる打ち方ではないとは思いますが、私には合っていたようですね。
山崎拓: やっぱり人生の転機とか発想の転換ってあるんですね。ちょっとしたことで。
王貞治: ホームラン打てるようになったのものプロ野球入って4年目でしたが、監督でも最初のうちは全然だめだったんですね。ジャイアンツでも4年目で優勝、ダイエーホークスは5年目で優勝。まず使っていただく方に根気がないと、ここまでにはなれなかったと思うんですよね。この歳になっておかしいんですが、なんとなく全部が遅咲きというかね。
山崎拓: みんなそう思ってませんよ。生まれつきの天才だと思ってますよ。高校生のときからスーパースターで。


100人でも200人 でも大リーグへ行ける ような野球界に

王貞治: 甲子園では打てたんですけど、プロに入ってからなかなかうまくいきませんで。
山崎拓: 最初はピッチャーでしたよね?
王貞治: はい、ピッチャーで入ったんですが、すぐバッターになれと言われて。
山崎拓: それも良かったんでしょうね。
王貞治: そうですね、どっちのほうがチームにとってもいいか、本人にとってもいいかということで、じゃあバッターにしようという結論になったようですが、私としては甲子園でも一応優勝したほどのピッチャーでしたから大変がっかりしたことを思い出します。
山崎拓: 最初はがっかりされましたか……。
王貞治: ピッチャーというのは一番華なんですね。あそこにひとりで立って。
山崎拓: しかし1週間に1回しか出てこないですよ(笑)。
王貞治: われわれの頃は毎日のように投げてましたんで。バッターたちは機械ができたおかげで練習をすごくできるようになって技術がずいぶん向上してますので、ピッチャーはなかなか大変な職業になりました。バッターは両手で振りますが投げるほうは片手ですから、どうしても故障とかが出やすいんですね。ピッチャーは一日中練習するようなことはできません。バッターはきっかけがつかめそう、なんてときには何時間だって練習できるんですね。給料でいってもバッターが断然有利なんですね。ただ、いい仕事したときの気分はピッチャーが最高なんです。相手をぴしゃっとゼロに押さえたりしたら、もう……。あの快感は最高なんじゃないでしょうか。
山崎拓: バッターは9人に1人だけど、ピッチャーは投げ続けますからね。完投なんかしたら大したもんだ、となる。
王貞治: ピッチャーはみんなが集中して見てますから気分もいいんじゃないでしょうか。夢をもう一度、でもう1回ああいう思いをしたいということでみんな頑張っているわけですね。
山崎拓: イチローなんかが海外で活躍してますが、日本の野球界は大丈夫ですか?
王貞治: これからもどんどん行く人が出てくると思います。しかし、その人たちがいなくなったから日本の野球が弱くなるとは思ってません。そういう選手が出ることによって、よし今度は俺が行くんだ、行けるような選手になろう、とまた頑張りますから、ファンにとっては新しいスターがどんどん生まれてくることを楽しんでいただければいいんだと思うんですね。むしろもっと向こうに行けるような選手が出てほしいなと思うくらいです。日本とアメリカの野球っていうのはまだまだ差はありますが、われわれが選手のころよりずいぶん縮まってきましたし、日本から行った選手もそれなりの成績を出せるわけですね。イチローの場合は頭抜けてましたが。これからももっともっと日本の選手が、将来はアメリカへ行ってやるんだという気持ちを持つと、もっと練習に身が入りますし、レベルが上がるんでファンにも楽しんでいただけると思います。100人でも200人でも大リーグへ行けるような野球界にしたいです。



ホームラン打ったんじゃ ないですよ、シュウマイを 売ってた

山崎拓: なるほど、元気づけられますね。福岡は、世の中元気がない中では元気があるほうで、その元気の原因のひとつがダイエーホークスなんです。
王貞治: そのためにもわれわれが頑張って、日本一になったときの熱気をもう一度味わっていただきたいと思っているんですけど。もうその雰囲気ができつつあると考えています。
山崎拓: 実は昔、平和台球場でシュウマイ売ってたことがあるんです。
王貞治: ほう……。
山崎拓: 観客が3000人くらいしか入ってなくて。3万席あったんですけど球団が弱くなっちゃって観客が入らない。今ならシュウマイ屋やったら儲かっただろうな、と思うんです(笑)。
王貞治: 3000人じゃ儲からないですね。
山崎拓: ええ、それが本業でしたから大変で……。
王貞治: えっ、アルバイトじゃないんですか。
山崎拓: いえ、社長でした(笑)。県会議員になる前、27〜8歳のころです。それで平和台球場をいよいよ壊すときにフィナーレのソフトボール大会をやりましてね、あそこでうっとったなあ・・・と懐かしかったですよ。ホームラン打ったんじゃないですよ、シュウマイを売ってた(笑)。
王貞治: そういう経験をされて政治の世界に……それは初耳でした。
山崎拓: 僕は二世、三世じゃなくて一世なんです。たたき上げでここまで来ましたけど、最初はプロ野球ファンから出発しとるわけです(笑)。
王貞治: そういった意味では、二世の人とかよりは思い切ったことができますね。
山崎拓: そうなんです、失うもの、ないですから。
王貞治: こういう時代ですから、思い切って頑張っていただきたいと思います。
山崎拓: ありがとうございます。お互いに頑張りましょう。

(2002年2月9日 高知・新阪急ホテルにて)