はじめに  

二〇〇〇年六月の総選挙の直後から、福岡や東京で、「居酒屋トーク」を始めた。月に二、三回のペースで一杯飲みながら、一〇人規模で自由に政治談議を展開している。

日ごろから、講演などで大勢の方々とお会いしてきているつもりでも、それだけでは一方通行に過ぎない。国会議員生活二八年、いつの間にか民意を幅広く汲み上げる努力を怠ってきたという反省からスタートしたものだ。インターネットで公募することもあり、集まってくるのは、特定の業界や団体に属さない一般のサラリーマンや公務員など二〇代から四〇代の比較的若い世代が中心である。  

参加メンバーのナマの声を聞いていると、共通点が浮かび上がってくる。自分たちの老後よりも、むしろ子どもの将来に関心がある。平和と安全は、水や空気のように当たり前にあると思っている。ほとんどが無党派層だが、既成政党に反発し、支持したい政党や政治家が見いだせないだけで、実は政治への関心、参加意識は高い。  ところが、その若い人々も、国の財政破綻や育児、年金、医療、介護の問題を掘り下げて考える一方で、残念ながら「憲法」にはあまり関心がない。読んだこともないという人さえいた。

憲法改正を積極的に推進すべきだという意見は、意外に少なく、どうやら、別に反対する理由もないから消極的に賛成している人が多い、ということらしい。憲法改正論イコール第九条改正論と認識している向きも結構多い。また、憲法第九条のおかげで、日本の平和と安全が保たれていると思い込んでいる人もいる。

日本の憲法が一九四六年の制定(明治憲法の改正)以来、一度も改正されたことがなく、逆に諸外国の憲法が、しばしば改正されている事実を知らない人は多い。この間、社会経済状況は大きく変化した。貧困から抜け出し、モノの豊かさから、さらに心の豊かさを求める時代になった。グローバリズム、少子高齢化、情報革命の波が押し寄せてきている。

当然のことながら新しい価値観の下、国民は新しい国家目標を見定めなければならない。それには、憲法改正論議を国民レベルで盛んにすることが大切だと感じている。そのことが「憲法」の存在を国民のなかに定着させると同時に、二十一世紀における日本の新たなアイデンティティを創造するという意義を持つことにもなる。

本書には、二十一世紀を担う若い世代に向け、できるだけ憲法論議に参加してほしいというメッセージを込めたつもりだ。憲法を考えることは、国のかたちや在り方を考えることだ。自分自身と周りの社会の現状とがどうつながっているのか、そのつながりはいかにあるべきなのか、どう変えていけばいいのか、一緒に考え、悩んでほしい。社会の中核を既に担っている世代の間で、本書を契機にさらに憲法改正をめぐる論議が深まれば望外の幸せである。