第19章 環境とエネルギー政策


三つの「E」の同時達成


エネルギーの安定供給(Energy Security)

 日本のエネルギー自給率は、依然として一八%程度にすぎず、先進国のなかで最も低い水準にある。また、石油依存度が下げ止まるなかで、石油輸入に占める中東依存度は、近年石油危機時を超える水準にまで高まっている。
 一方で、エネルギー消費は、厳しい経済状況にもかかわらず増加の一途をたどっており、エネルギー供給が途絶した場合の経済社会に与える打撃は、石油危機時にも増して大きくなる可能性がある。特に、最近ではアジア地域全体でエネルギー供給に対する脆弱性が拡大しており、広い視野に立った上で、エネルギーの安定供給を確保する必要がある。
 また、アジアにおけるクリーン・エネルギー開発のための国際協力についても、日本はイニシアティブを発揮すべきだ。

経済成長(Economic Growth)
 経済のグローバル化の流れのなかで、日本が「モノ」をつくる場所としても魅力を失いつつある。こうした産業の空洞化を防ぎ、日本産業が国際競争力を有する強靱な産業として発展するために、経済活動の基盤であるエネルギーのコスト低減を図る必要がある。

地球環境の保全(Environmental Protection)
 日本は、これまで化石燃料を大量に燃やすことで経済的に発展してきたが、今後は、全人類の公共財である地球を温暖化から守り、人類の生存を守るためにも率先して温室効果ガスの九割を占める二酸化炭素の削減に努めなければならない。
 一九九七年の地球温暖化防止京都会議(COP3)において、日本は、二〇〇八年から二〇一二年の間の温室効果ガス排出量を一九九〇年比で六%削減するとの目標にコミットした。この目標達成のため、民生、運輸部門での大幅な努力が必要であり、エネルギー起源の二酸化炭素については、二〇一〇年度までに、少なくとも一九九〇年度レベルに戻さなくてはならない。

三つの「E」同時達成のための施策
原子力の開発・利用
 原子力は、燃料の供給と価格が安定しており、発電原価に占める燃料費の割合が低く、発電過程において二酸化炭素を排出しないという環境特性を有している。
 これらの利点を踏まえ、今後も積極的な開発・利用の推進が求められる。安全性の確保を大前提に、地域住民を含めた国民の理解と協力の下、立地の推進を図っていく。このため、立地地点の地域振興策の充実、高レベル放射性廃棄物の処理処分などの確実な展開が必要だ。原子力発電所など施設の保安対策も国家に課せられた新たな命題である。
 その際に何よりも大事なのは、原子力に対する国民の信頼を強固なものとすることだ。

新エネルギーの導入
 風力、太陽光、太陽熱などの新エネルギーの利用を普及することは、二酸化炭素の排出を大幅に削減するとともに、エネルギー・セキュリティの向上にも寄与する。
 新エネルギーは、現時点では経済性の観点から厳しい状況にある。しかし、むしろ先駆的に、普及のための技術開発や支援措置を引き続き行ない、近い将来、現在の数倍程度のエネルギー供給量にまで増加させたい。

抜本的な省エネルギー
 日本経済は石油危機を契機に、世界でも有数の省エネ型に転換してきた。製造業では同じ製品を生産するために必要なエネルギーは、現在、石油危機時の約六割にとどまっている。その結果、工場のエネルギー消費の伸びはほとんど横這いであるにもかかわらず、生産は増大している。こうした産業界のがんばりは素直に評価されるべきだ。省エネはエネルギーコストも同時に下げるので、まさに一挙両得であり、これからも新しい省エネ技術の開発・導入が必要である。
 工場部門にも、さらなる努力を求めたいが、石油危機後エネルギー消費が約二倍となった民生・運輸両部門の省エネがますます重要になっている。この観点からは、家電・OA機器や自動車といった機器のエネルギー効率のいっそうの向上、物流の効率化などに取り組むべきだ。

戦略的な国際エネルギー政策
 日本を含むアジア地域全体におけるエネルギー需給構造は、域内の需要増加・供給の限界から、近年、脆弱になっている。アジア地域・中東地域・ロシアにおいて、日本の有する資金力、技術、人材を活用して交流や協力を進め、戦略的なエネルギー安全保障体制を構築することが重要である。
 特に、既存エネルギーのなかで比較的環境負荷が少なく、供給地域も偏っていない天然ガスは、自動車用燃料としても注目され、従来からの発電用燃料としてのニーズの伸びも予想される。二〇一〇年頃までの供給体制は目処がついているが、その後の安定供給を確保するには、早くから準備を進める必要がある。
 日本近海には、天然ガスがシャーベット状に蓄積されている「メタン・ハイドレード層」が、約一〇〇年間分あるとされている。これを取り出して使うための技術開発には数十年を要すると言われているが、地球環境保全および二一世紀のエネルギー安全保障の観点からも、研究を促進させていきたい。