第7章 実質三%の経済成長


 日本国民の素質と勤勉さを再結集することにより、実質三%程度の経済成長の達成を二〇一〇年に向けた努力目標として掲げたい。
 経済成長は、労働力、資本、全要素生産性(TFP)の伸びで規定される。少子化により、女性と高齢者の就業が進むとしても、労働力の増加は多くを期待できない。他方、各種改革を進め、資源配分の適正化と技術革新を実現していけば、全要素生産性の上昇が期待できるし、新分野への投資を通じて、資本ストックについてもプラスの効果が出てくる。

期待しにくい労働力
「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)によれば、日本の総人口は、中位推計では二〇〇七年に、低位推計では二〇〇四年にピークを迎える。少子化による若年層の人口減少の影響が大きい。
 夫婦の平均出生児数は、一九六〇年代以降、二・二人前後で安定しているにもかかわらず、合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に産む子どもの数)は、一・三八まで低下している。二〇代後半の女性の未婚率は、この二〇年間で二割から五割まで上昇しており、女性の晩婚化・未婚化が影響している。
 また、高学歴化によって、新規労働者の平均年齢は一九五○年に一五・四歳だったのが、現在では一九歳台になっている。
 今後、人口の高齢化は進み、総人口に占める六五歳以上高齢者の比率が、一九九五年の一四・六%から、二○一○年で二二・○%、二〇二五年には二七・四%と上昇していく。高齢者は、国民七人に一人から、四人に一人となる。
 一九九六年時点における六五歳以上の就業率は、米国で一六・九%(女性八・六%)、ドイツでは四・四%(同一・六%)であるのに比べ、日本では男性三六・七%(同一五・四%)と著しく高い。国民の勤労に対する意識に加え、平均寿命が長く、健康であること、自営業の割合が高いことなどがその理由として考えられる。高齢化の進展と年金などの動向も踏まえると、健康な人は、社会参加、生きがいという観点からも、今後はますます長く就業し、社会で活躍し続けることになるだろう。
 また、女性についても、出産、育児の環境整備によって、二〇代後半から三〇代前半のいわゆるMカーブの底辺に当たる層の労働力の増加が期待できる。
 以上のように、高齢者と女性の就業は進むが、少子化の影響が大きく、労働者数の増加は多くを期待できない。このため、むしろ国民一人ひとりの能力開発と生産性の向上に力を入れていくべきだ。
 なお、外国人労働者を積極的に活用しようという考え方もある。
 現行制度においては、研究・教育など一定の資格に該当する外国人の在留と就労が認められているが、これを変更して、成長を支えるための単純労働者として外国人を受け入れる考え方だ。
 これは、日本人にとって非常に重大な選択である。労働力の落ち込みをカバーするには相当数が必要であること、国内の賃金低下、アジア諸国などとの適切な分業への影響、学校教育、住宅など受け入れ体制の整備、周囲の日本人との融和のあり方も踏まえて、国民の間で充分に議論して結論を出すべきだと考える。

資本ストックの増加
 資本について見ると、少子・高齢化の進展によって、消費性向の高い高齢者層が増加するため、家計貯蓄率は低下していくと考えられる。
 しかし、一二○○兆円あると言われる日本の個人貯蓄を活用するとともに、設備投資につながるような新製品の開発や、企業の資本生産性を向上させ海外からの投資先としての魅力を高める努力を続けることにより、資本ストックは増加することが期待される。

決め手は全要素生産性の伸び
 最も重要なのが全要素生産性(TFP)の伸びである。諸々の改革の成果がこれに凝縮されるからだ。日本のTFPの伸び率は、最近でこそ一%を切っているが、一九八○年以降の年平均は約一・四%である。
 個別の課題で後述するように、これから、ヒト、モノ、カネ、土地が、より効果的な方向に振り向けられるようシステムや制度の改革を進めていけば、個人の能力の最大限の発揮、企業の組織改革、技術革新、それによる生産プロセスの改善、インフラ整備が進むことなどを通じて、二%程度のTFPの伸びが期待できるのではないだろうか。TFPは、これからの私たちの努力と熱意の関数である。