第U部 活力ある経済

「活力」ある経済の意義
 日本は、第二次世界大戦で、それまで蓄積してきた国家資産の約半分を失った。戦後の廃墟のなかから立ち上がり、「欧米に追いつき・追い越せ」を合い言葉に、国民一人ひとりの英知と汗によって高度経済成長を実現した。
 冷戦構造の狭間で平和と安定に恵まれ、欧米を模範にした新しい産業、技術、製品を生み出す一方、人口、特に、若年労働者の増加によって生産力が高まり、消費市場も拡大したことが大きい。日本の経済社会システムも、時代環境にかなっていたため非常に効率的に機能した。
 今日、日本の経済規模は世界の約一四%に、一人当たり所得水準では主要先進国中、最高になった。
 しかし、今や状況は大きく変化した。自ら先頭集団に入った現在、日本経済は、バブル経済崩壊後の調整に手間どっていることに加え、他人(欧米)の背中を見て走ることができず、経済社会システムも制度疲労が目立ってきた。累次にわたる総合経済対策の効果もあって、急激な悪化には歯止めがかかりそうな気配も出てきているが、まだ自律的回復が展望できる状態にはない。人口についても、欧米に類を見ないほどのレベルとスピードで少子・高齢化が進んでいる。
 このように厳しい状況だが、私は、日本人の素質と勤勉さとによって、日本経済の活力を取り戻したい。個性豊かで規律ある個人や、創意工夫に富む企業が活躍でき、安定した雇用、安心できる老後生活を保証できるのは「活力」ある経済のみだ。
「活力」こそ、私たちが目指すべき、一人ひとりが夢と生きがいを持ち、努力が報われ、失敗してもやり直しがきく社会の大前提であり、国民の「安心」と「豊かさ」││量的な豊かさだけではなく、質的な心の豊かさ・ゆとり││の源泉である。また、日本が世界の平和と発展に対して、その地位にふさわしい貢献を続けていくためにも不可欠である。