いつ政権を執るという局面が くるかもしれない。
だから、そのパワーを どうやって身につけていくか。

 
財界を代表する論客は、21世紀の政治リーダーに何を期待するのか。
科学技術創造立国、中心市街地活性化、そして憲法改正を掲げて
政策マンぶりを遺憾なく発揮してきた山崎拓に、
論客の容赦のない辛口の注文が飛ぶ。「一歩、前へ!」
論客の厳しいかけ声は山崎拓の耳にどう響いているのだろうか。
 
いきなりで恐縮ですが、
政治家として、あるいは人間として、
山崎拓に注文をつけるとしたら・・・
 
諸井 虔:そうね、よくできた方でね、あんまりあげつらうような欠点もないが、将来、やはり総理総裁をやられるということで考えた場合、ちょっと今のままではパワーが不足しているのかな、という感じがするね。それは多分、山崎さんが非常に真面目で、あんまりあこぎにお金を集めるなんていうことができない、ちょっとやりかけるとすぐ、問題になっちゃったりして。(笑い)だからグループを大きくするのが難しいのかな。僕らのバックアップの仕方ももちろん足りないのかもしれないが、今は難しい時代だということでしょう。でも、そこを克服してもう少しパワーをつけていかないと、なかなか総理総裁というところへ行かないのかなあっていう感じがするね。
 
 あの方は体育会系なんで、ちょっと見は政策なんかあんまり通じていないように見えるのだけど、私は今のリーダーたちの中ではむしろ一番政策には通じている。我々財界の人間にとっても、官僚の方々にとっても、やはり、判ってていろいろ言うのと、判らんでいろんな無茶を言うのとでは全然違うね。非常に緻密に考えたり勉強したりしている。裏返して言うと、いわゆる昔からの豪放磊落型の、大勢子分を集めて人を引っ張っていくっていうようなタイプではない。そこが、非常にポイントじゃないかっていう気がする。
 
 ただ、加藤紘一さんなんかを見てても、山崎さんと組んでいることが、加藤さんにはものすごいプラスだね。そういう政策の面でも、言い方が難しいんだが、加藤さんは時々ちょっとぶれることがあるんだが、それを山崎さんがいつもうまく説得したり、修正したり、カバーしたりしている。山崎さんの政治的な判断はすごいね、ここでやらないとだめだっていうタイミングの判断とか、あるいは、今回はこういうふうにしないといかんとか。そういう政治的な選択の判断、これはかなり今までも正しい判断をしてきていると思う。ただどうも結果としてそれが自分のことになかなかつながらない。まあ、それは政調会長もやったし、非常に重要な場面を切り抜けて来たから、それなりの業績にはなっているんだけど。ただ、総理総裁を目指すということになると、もう一段二段、強力にやっていかなくちゃならない。政策通で政治的な判断が正しいのに、なんとかならないのかな、どうしたらいいのかな。私は政治家じゃないから、よく判らないけど。そこのところが一番気になるよね。
それから私でなければ言わないことだろうから、あえて言うけれども、親分の選び方はあまりうまくないね。時のめぐり合わせで、自分の思うように親分を選ぶっていうわけにもいかないから、たまたまそうなっちゃった。そうせざるを得なかったんでしょうね。中曽根さんと渡辺さんの間に立って非常に苦しんで、それでも何とか、両方の顔を立てながらやってたんだが、結局、渡辺さんが早く死んじゃった。ちょっと、計算違いだし、山崎さんには痛手だったと思うね。
 

いつ政権を執るという局面がくるかもしれない。だから、そのパワーをどうやって身につけていくか、大きな集団をどう作るか、が課題だね。これからはどのリーダーもそうそう大きな集団を作れないと思うけど、せめて五〇〜六〇人ぐらい欲しい。でも、なんて言ったらいいのかな。やっぱり悪くなりきれない人だね、あの人は。
だけど現実の政治は、善人で人情家のままだと、なかなか大成できないんじゃないかな。どこかに非情なところがあったり、大胆に思い切った策に、思い切った手を打つ豪胆さのようなものがないと、飛躍が難しい。ほんとうはね、他人の面倒をよく見て、陰徳を結構積んでいるよね。ただそれが返ってきて良さそうなんだけどね、どうも政治の世界っていうのは、利用するだけ利用する方が勝ちみたいなとこがあってね、だからいっぽうではあんまり悪くならないで欲しいなという気もするよね。
 
 いっそのこと総理総裁をあきらめて、むしろオーガナイズする側に立つ手もないわけじゃないが、昔から自民党には一人か二人そういう人物が必ずいるよね。トップにはならないんだが、けっこう実力者で、決定権限があって、いろいろ実質的に物事を動かしてきたような人がいる。でも、政治家にそれを言うのは究めて酷な話でね、昔、僕は中川一郎さんに、総理総裁を狙わんで、副総理副総裁でいったら貴方はきっとね、すごい長持ちするよって言ったことがある。彼は「いや、その、諸ちゃんよ、それだけはな。一%でも、可能性があったらやっぱり政治家はチャレンジするんだよ」って言っていた。
 
 だから、これ、政治家に言うには難しい話で。一方ではそういう気持ちもなきにしもあらず
で、あんまり悪くなって、総理総裁になるために泥まみれになるよりはむしろ、そういう立場をとる方法もあるのかなあという気はするが、それは私の主観であって、ご本人にそういうことは私はよう言わんわな。と言っても、いま言っ
ちゃったけど。(大笑い)
 今、山崎さんは自分のアイデンティティーを憲法改正においている。それはある意味でいちかばちかの賭けとも言える。非常に難しい話だし、場合によると無党派層の感覚と相反するような部分があって人気を失う危険もある。しかしこれは、山崎さんの嘘、偽りのない政治信条、本当の気持ちだと思うよ。確かに日本にとってどうしても必要なことで、私は間違っていないと思う。だから真正面から取り組んで、一生懸命やっていくうちに、道は自ずから開けるのかもしれない。
 
 大胆であることが必ずしもいいとは言い切れない。豪胆さが欠けているわけではないんじゃないかな。山崎さんの言っていることは非常に筋が通っているし、よく説明しているが、一般の国民には、届きにくいかもしれないね、亀井(静香)さんみたいなほうが、いい悪いは別にして届きやすいかもしれない。(笑い)ただ、あの流儀は長続きしないかもしれない。まあ、人間というのは、そうそう自分の本質を変えるっていうことはできないと思うんで、自分なりのやり方でやれるところまでとにかくやっていくしかないんじゃないかな。運もあるんだよね。タイミングが合うと非常にサーッと伸びる場合もあるしね。タイミングが悪いとだめになっちゃうこともある。自分を活かしていくしかないんだね。自分の流儀で、ひたむきにやるしかない。この次の総裁選挙には、当然出馬するんだろうが、その後どういう展開になるか。これはまたひとつの大きな勝負どころでしょうね。
 
(2000年10月19日収録・談)